野村系 Laser Digitalが日本で4年ぶりの暗号資産交換業登録――市場参入ルートはどう変わったか

2026年8月、日本のデジタルアセット市場で異なる2つの登録が相次ぎました。

8月21日には、野村グループのデジタルアセット事業を担うLaser Digitalの日本法人、Laser Digital Japanが暗号資産交換業者として登録されました。同社によれば、このカテゴリーへの新規参入は約4年ぶりです。

その6日後の8月27日には、コインチェックが電子決済手段等取引業の登録を取得しました。

一見すると「日本で暗号資産関連のライセンスが再び出始めた」という一つのニュースにも見えます。

しかし、この2件は同じ登録ではありません。

むしろ今回注目すべきなのは、日本のデジタルアセット市場への参入方法が複数の制度へ分かれ、その選択肢が増えてきたことです。

6日間で起きた2つの登録

Laser Digital Japanは8月21日、暗号資産交換業者として登録されました。登録番号は関東財務局長第00032号です。

一方、コインチェックが8月27日に取得したのは電子決済手段等取引業の登録です。登録番号は関東財務局長第00002号です。

コインチェック自身はすでに暗号資産交換業者として登録されています。

つまり後者は「新しい暗号資産交換業者の誕生」ではなく、既存の暗号資産交換業者がステーブルコイン等を扱うための別の規制枠組みに事業領域を広げた事例です。

この違いを理解することが、今回のニュースを見る上で重要です。

Laser Digital Japanは約4年ぶりの暗号資産交換業への新規参入

Laser Digital Japanは2023年10月に設立され、2026年8月21日に暗号資産交換業者として登録されました。

同社はまず、日本国内の暗号資産交換業者向けにサービスを提供し、国内市場の流動性向上に貢献する方針を示しています。

将来的には日本の機関投資家に対するデジタルアセットの取引機会提供も検討しています。

ただし、登録取得とサービス開始は同義ではありません。

同社は登録発表時点で、具体的なサービス内容や開始時期については今後改めて公表するとしています。

今回の特徴は、新たな個人向け暗号資産取引所が一つ増えるという話ではなく、機関投資家向け取引や流動性という異なる需要を想定した事業者が参入した点にあります。

コインチェックは別制度である電子決済手段等取引業に登録

コインチェックが取得した電子決済手段等取引業は、暗号資産交換業とは異なる制度です。

日本では2023年6月から、一定の法定通貨連動型ステーブルコイン等を「電子決済手段」と位置付け、その売買・交換の媒介等を業として行う事業者に登録を求める制度が始まっています。

コインチェックは2024年2月、Circleと日本国内におけるUSDCへのアクセス拡大に向けた提携を発表しました。

今回の登録取得を受け、同社はステーブルコインやオンチェーン金融領域で事業を順次展開するとしています。

ただし、USDCがCoincheckの利用者向けにいつ提供開始されるかは、現時点で公表されていません。

「暗号資産ライセンス」は一種類ではない

海外企業との会話では、「日本でcrypto licenseを取るにはどうすればよいか」という問いがよく出てきます。

しかし、日本市場ではこの問い自体を分解する必要があります。

暗号資産の売買・交換等を直接行う場合には、暗号資産交換業の登録が問題になります。

一定のステーブルコインに関する売買・交換の媒介等であれば、電子決済手段等取引業という別の制度があります。

さらに2026年6月1日からは「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」という新しい制度も始まりました。

これは暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者から委託を受け、一定の範囲で売買・交換の媒介を行う事業者を対象とした制度です。

もちろん、証券トークン、デリバティブ、発行、カストディ等まで含めれば、必要となる規制枠組みはさらに異なります。

重要なのは、「どのライセンスを取るか」から考え始めるのではなく、「日本で何をするのか」から逆算することです。

USDCが示す「発行体と国内流通業者を分ける」モデル

この点で参考になるのがUSDCです。

Circleは日本法人を設立し、日本市場で事業を進めていますが、USDCの国内向け流通では日本の登録業者との提携モデルを採用しています。

2025年3月にはSBI VCトレードが国内第1号の電子決済手段等取引業者としてUSDCの取り扱いを開始しました。

そして今回、コインチェックが第2号の登録業者となり、USDCを含むステーブルコイン事業への展開を進めています。

これは海外企業にとって重要な示唆を持ちます。

自社の商品や技術を日本市場へ持ち込むために、自社自身がすべての規制機能を保有しなければならないとは限りません。

国内の登録業者が顧客との取引や規制対象業務を担当し、海外企業が商品や技術を提供するという設計もあり得ます。

ただし、これは規制を回避する方法ではありません。

誰が顧客と契約するのか、誰が資産を取り扱うのか、誰が取引を執行・媒介するのかによって必要となる規制対応は変わります。

今回の登録が意味しないこと

今回の2件をもって、「日本でライセンスが簡単に取れるようになった」と判断するのは早計です。

Laser Digital Japanは2023年10月の法人設立から登録まで約3年を要しています。

コインチェックも、Circleとの提携を公表した2024年2月から今回の登録まで約2年半が経過しています。

ただし、これらは登録審査そのものに要した期間ではありません。

申請開始時期は公開情報から確認できないため、「日本のライセンス審査には約30か月かかる」と一般化することはできません。

また、両社とも登録取得時点ですべての新サービスが開始しているわけではありません。

登録、サービス準備、実際の商用開始は区別して見る必要があります。

日本市場への参入方法は多様化している

今回の2件から読み取れるのは、日本が一気に規制緩和へ転換したということではありません。

変わっているのは、規制された市場へアクセスするための構造です。

Episode 93では、Bitgetなど海外の無登録取引所が日本居住者へのサービス提供を終了していく動きを取り上げました。

一方で今回のLaser Digital Japan、Coincheck、そして新しい仲介業制度を見ると、正規の規制ルート側では選択肢が増えています。

自社で登録事業者になるのか。

既存登録事業者と提携するのか。

新しい仲介業制度を活用できるのか。

日本市場への参入では、こうした機能分担を設計することが以前にも増して重要になっています。

約4年間の空白期間に何が起きたのか

Laser Digital Japanは、暗号資産交換業への約4年ぶりの新規参入となりました。

では、この約4年間、日本の暗号資産市場では何も起きていなかったのでしょうか。

実際にはその逆です。

既存の登録会社を活用した海外企業の参入、ステーブルコイン制度の創設、USDCの国内流通、新たな仲介業制度、そして暗号資産規制そのものの再設計など、市場参入の構造は大きく変化しました。

次回のJapan Digital Asset Weeklyでは、この約4年間を振り返ります。

和橋堂について

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