日本時間の10月30日早朝、世界最大手の暗号資産取引所Binance(バイナンス)から約1兆円近い暗号資産が不正に流出しました。そのうちの約半分はすでに凍結されており、今後返還される可能性がありますが残りの5千億円近くは現状取り返せる見込みがないと言われています。
普段、コインチェックやビットフライヤーなどの日本の暗号資産取引所でちょこっとずつ積み立てているような一般層からすると、こんなニュースが飛び込んできたら「私の資産は大丈夫なんだろうか」「自分の暗号資産も突然盗まれるのでは」「今預けてる暗号資産も全部売った方が良いのでは」そう狼狽えてしまう人もいるかもしれません。
そんな方に向けて、今回の事件について改めて解説するとともに、今回の事件と暗号資産そのものの技術的なことについて少しだけお伝えできればと思います。
【今回の事件について】
まず、声を大にしてお伝えしたいのは、日本のBinance Japan(バイナンス・ジャパン)をお使いのユーザーの方も含め、日本のユーザーの資産は引き続き保全されているということです。
日本の取引所は、金融庁(財務局)の登録を受けている歴とした「金融機関」です。(あなたがお使いの取引所が登録業者かどうかはこちらの金融庁のリンクからご確認ください:https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf)
金融機関として、非常に重要なルールがあります。それは、ユーザーの資産と金融機関自身の資産とを分別管理すること。そして、ユーザーの暗号資産については(ほぼ)100%を「コールドウォレット」で管理することが求められています。これは、常時インターネットから完全に切り離したオフラインで管理するウォレット(財布)のことであり、ネットから隔離されている以上、ハッカーがつけ入る隙はありません。
※ただし、コールドウォレットだからといってリスクが0な訳ではなく、コールドウォレットの管理に携わる人間やシステムが侵害されてしまうというリスクは引き続き残ります。
今回バイナンスがハッキングされたのは「ホットウォレット」であり、通常のオペレーション(入出金等)に対応するためのオンラインで送金できる状態にあるウォレットでした。
不安な方は、お使いの取引所のウェブサイト、リリースを見に行って下さい。各社ステータスについての報告がされているはずです。
【暗号資産そのものの安全性】
今回の事件(あるいは過去の他の流出事件)を受けて、「そもそも暗号資産って安全なの?」と疑問を改めて持った方も多いでしょう。これをもって、世界中の人が保有するビットコインが誰でも盗めるようになった、ということでは全くありません。
暗号資産の根底技術である、ブロックチェーンは「分散台帳」と呼ばれるように、通常、特定の金融機関のシステム(台帳)内でしか見ることのできない取引が世界中に分散し、誰でも検証できる仕組みになっています。(ビットコインやイーサリアムなどの公開型=パブリックブロックチェーンの場合)
したがって、今回の事件においてもその発生の数時間後にはChainalysisやTRM Labsなどのブロックチェーン分析事業者が即時に分析結果を発表し、引き続き詳細な犯行手口などを追っています。おそらく警察等の捜査にも影響するため、現時点で公表されていない部分についてはあえて伏せられているのでしょう。
公表されている分析において分かってきているのは、あくまでBinance内のシステムや送金権限を悪用されていた、ということであり、そういう意味では、時折発生する経理部による不正送金事件と根底の原因は近いと考えます。ビットコインなどの基本的な暗号技術が破られたり、ブロックチェーン上の記録が自由に書き換えられたりしているわけではありません。
【一般ユーザーが普段から意識すること】
まとめると、日本の取引所は、法令により資産をしっかり管理しており、暗号資産の技術が破られたことを意味することではありません。とはいえ、ちょうど最近セキュリティを意識し始めた、なんて方も多いと思いますので、今回の事件を踏まえて、お勧めしたいことを以下にまとめます。
- 「有名だから」だけで資産の預け先を選ばない上記の金融庁の登録取引所の中から利用先は選びましょう。さらには、その取引所の親会社やグループ会社の傾向、経営陣、顧客サポート体制など見れるとなお安心ですね。今回のバイナンス事件を受けて、何も発表していない取引所なんかがあるとすれば(無いことを祈りますが)顧客心理に寄り添っていないのでは、と思ってしまいます。
- アカウントのログイン、入出金、取引時の設定を確認するその取引所が対応していればパスキーを使ったり、2段階認証を設定しましょう。パスワードは使いまわさず、登録メール自体も安全にしておきましょう。
- 不安を煽ったり、即時の対応を求める連絡に対しては、一旦立ち止まるメールやSNSのリンクは無闇矢鱈に踏んではダメ。公式アプリ/ウェブサイトから確認する癖をつけましょう。パスワードや認証コードは間違っても他人に伝えてはいけません。不安になっている時にこそ、人はガードが下がってしまいがちです。
- リスクを理解した上で投資する技術が揺らいでいない、といっても暗号資産の価格は激しく上下しますし、下手すると価値が0になるリスクがあります。(株式等の有価証券も同じですが)目の前の○%という表示だけを見て、盲目的にお金を突っ込むのはやめましょう。なぜその利回りが出せるのか、自分なりに理解した上で投資するようにしましょう。
